2024年8月15日 2025年からエスコンフィールドHOKKAIDOの内野天然芝部分を人工芝に張り替えるとの発表がされました。夢のボールパークの大きな魅力のひとつがなくなってしまうことにショックを受け、ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの正式なプレスリリースと前沢賢事業統轄本部長のインタビュー記事を引用して考察してみようと思います。
まずはF.VILAGEホームページのプレスリリースより
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日本初、MLB仕様のShaw Sports Turf社「B1K」導入
株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントは、エスコンフィールドの内野天然芝エリアに米国メジャーリーグの複数球場で採用されているShaw Sports Turf社(本社:米国ジョージア州)の「B1K (Batting a Thousand Natural Turf)」を導入することを決定いたしました。日本国内での導入は初の事例となります。2025年オープン戦より使用開始予定です。
天然芝をあきらめ人工芝化するのに「日本初B1K導入」としてわざと解りにくく、かつすごいことをやるかのようなタイトルにしています。続いて
「B1K」は天然芝よりも耐久性が高く、技術革新により天然芝と同等のフィーリングが得られる人工芝です。導入により以下のメリットが見込まれます。
- ホーム、ビジターチーム共に試合前の練習における制約減少(練習メニューの自由度アップ)
- 少年野球等アマチュア野球の利用機会の増加
- その他多様なイベント等における利用拡大
ここでようやくB1Kが人工芝であることが説明されます。
また、ここに添付してある写真は少年野球をやっている時のものでラインが芝の上に引かれており、天然芝へのダメージを強調しています。続いて
「B1K」はWBC 2023の舞台ローンデポ・パーク(マーリンズ)をはじめ、チェイス・フィールド(ダイヤモンドバックス)、グローブライフ・フィールド(レンジャーズ)、トロピカーナ・フィールド(レイズ)に敷設されており、球場関係者やMLB選手からも好評を博しています。
侍ジャパンが感動的な世界一になった2023WBCの会場もそうであると、イメージアップを図っています。
■Shaw Sports Turf社「B1K」の特徴
人工芝、充填剤、衝撃吸収パッドの3層構造。快適なプレー環境の実現と選手への負荷を軽減。充填剤にはココナッツの殻と繊維を主とする天然素材を採用しており、保水力も高く、安定したコンディションづくりが可能になります。
最後にB1Kの特徴が述べられて、プレスリリースは終了しています。
このプレスリリースの中で「人工芝」という単語は2回・「B1K」は5回使用されています。エスコンフィールドは人工芝でなく性能の素晴らしいB1Kにするというストーリーが見えてきます。つまり、プロ仕様のロングパイル人工芝を採用するということです。そして、実はこのB1Kはエスコンフィールドのファールゾーンの緑色の部分ですでに採用済なのです。
続いて、前沢本部長の奥歯にものの挟まったようなインタビューの気になった部分を抜粋して私の思い・感じたことを述べてみます。日刊スポーツより
【日本ハム】来季エスコン内野を人工芝化でイベント多様化 外野は…前沢本部長「やりたくない」 - プロ野球 : 日刊スポーツ
「一番はやっぱりイベントの多様化だと思いますね。今は天然芝の上に何か置くと、天然芝が死ぬ前提でやらなきゃいけない。人工芝だと、そういった問題がないのが1つ。もう1つは、去年も選手たちが冬場も練習していましたけど、内野は結構気を使って練習してもらわなきゃいけなかった。人工芝になることによって、ほぼ自由に練習ができるようになる。そういった意味ではプラスかもしれません」と説明した。
「一番は~イベントの多様化」←つまり天然芝だとイベントの種類・範囲・前後の期間に制限が生じて、今人気のあるこのスペースへの需要機会を損失しているという判断なのでしょう。
「冬場も練習していましたけど、内野は結構気を使って練習してもらわなきゃいけなかった~ほぼ自由に練習ができるようになる。」←これは事実でしょうが、楽天生命パーク・マツダスタジアムも同様ですし、何よりもその状態で去年よりチームが強くなっているので理由になっていません。
エスコンフィールドの建設段階から天然芝と人工芝のどちらを採用するかは議論されていた。前沢本部長は「ギリギリまでずっと検討していたけど、人工芝から天然芝にするのはなかなか大変。天然芝から人工芝にするのは、わりかし技術的にそんな難しくないっていうことで、まずハードルが高い方をやってからと今のような形になった。結果、2年たって3年目からは人工芝っていうことに」と経緯を明かした。
前半は前沢本部長の思いをどうにか通して内外野天然芝を実現した達成感。後半は経営判断により内野天然芝をあきらめなくてはならなくなった無念感が表れています。北海道という寒い土地で1年中良好な芝を保つために、地中には温冷水を流して地面の温度が冷たすぎず熱すぎないようにコントロールするシステムを採用してまで実現した内外野天然芝であったのにもったいなさすぎます。
「少年野球はもっとやりたかったけど、天然芝だと(少年野球の球場の)規格があってないんで、必ず全部(天然芝を)ひっくり返して補修し直さなきゃいけないっていうのがあって、試合数を少なくしていた。少年野球はもうちょっとやれるかなっていうのはあります。また、何かしら違うスポーツをやろうかなと思っています。それも天然芝だと難しいけど、人工芝だとできるっていうところもある」「(天然芝の維持コストと比べて)年間7、8パーセントぐらいは下がると思います。グローライトで(光を)当てていたりするので電力代も含めて。ただ、コストメリットがあるからやるっていうよりは、この球場をさらに使いやすくしていくための1つの手段として決めました」
そんなことは当初の企画段階で解っていることで、このコメントは立場上こう言わざるを得ないというところでしょうか。なんとなく会議の議事録を読み上げているような雰囲気が感じられます。
外野エリアは天然芝を維持する。前沢本部長は「僕はやりたくないですね。外野の天然芝のにおいっていうのは、この球場の1つの特徴でもある。僕は(人工芝にするのは)もう内野が限界かなって思います。また違う事業本部長とかチーム統轄本部長になった時にはどうなるかわかんないけど、少なくとも僕と(チーム統轄本部長の)吉村さんがいる間はないと思います」と断言した。
前沢本部長の怒りが感じられます。コメントの中から全面人工芝への圧力が相当あることがうかがえます。しかし、北海道・開閉式ドーム・内外野天然芝、この無謀とも思えるプランが現実のものになったことに、多くの人が魅力を感じこのボールパークに足を運んでいるのだと思います。これが、全面人工芝で屋根開閉のコストを抑えるため、基本的に屋根を開けない(みずほPayPayドームのように)となったら、試合のない日にでも来場している人たちは離れていくと思います。
もう一つ気になるのが、人工芝となる範囲です。プレスリリースでは「内野天然芝エリア」を人工芝に変えるとなっています。素直に読み取れば下図のようになります。
これは、メジャーリーグでも採用されているパターンでローンデポ・パークの内野はこうなっています。
でも、今回の発表から感じられる、経済性を優先した決定の匂いや、他のスポーツの開催へのコメントから、「もしかしたら下図のように内野のアンツーカー部分まで人工芝になってしまうのでは?」と感じてしまうのは私だけでしょうか?
この方が維持費・イベントの自由度といった面で有利ですし、全面人工芝化しやすくなりますからね。
北の大地に現れた夢のようなボールパークは2年間で改造されることになってしまいました。そのうち行こうと、悠長な思いで行動していなかったことをすごく後悔しています。
大和ハウスプレミストドーム(札幌ドーム)とエスコンフィールドHOKKAIDOが両方見られる時期に早く来場しなくてはならないと強く決心しました。
前沢賢事業統轄本部長・吉村チーム統轄本部長、お二人の熱い思いを信じています。
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